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“Frank Yoshida”作、中編ラブロマンス小説『離れられなくなっちゃう』が、goodbook社主催《出版登龍門》でグランプリ(大賞)を受賞!


連載ミステリー「商社マン綾野高次」新たなドラマが始まる!

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【でじたる書房出版予定作品)】


(1)〜愛犬〜



「やめなさい!」
 甲高い声が、暑い空気を突き破った。
「やめなさい、ったら!」
 10メートルほど前方の、橋のたもとに立っている男児に向かって、女性がもう一度叫んだ。
 自分の背丈の半分もあろう子犬を両手いっぱいに抱え、男の子は泣きじゃくっていた。
 飛び降りてもしれている高さであるが、どうも犬を投げ捨てようとする仕草に見えた。
「裕允(ひろよし)ちゃん、いい子だから」
 男の子は唇を更に尖らした。
「ボクの、、、ボクのプラモデルを壊したんだよ、このぺロが」
「死んじゃうよ、離したら。分かってるの!」
 恐らく母親だろう。彼女は叫ぶこと以外に、止める術を知らないようだった。
 国道沿いの、人家に繋がる小さな橋。
今、人間ひとりの人生を、変えようとしている。

 5分に一度ぐらいしか通らない車が、男の子の側を走り抜けた。
「裕允。こっちに連れといで。ね?」
 通り過ぎた軽トラックの背後から、砂塵が舞い上がった。
 男の子は決意したように、抱えていた子犬を首根っこと尻尾を握り、ぶら下げ始めた。
―キャン、キャン!
 子犬の眼が怯えている。
「裕允ちゃん! やめて!」
 男の子の体が前のめりになり、子犬と共に川に落ちようとした瞬間、通りがかりの男性が、背後から抱えた。
「危ない!」
 母親が駆け寄った。
「すみません。ありがとうございます」
「どうしたんですか?」
 男の子は力いっぱい、子犬を握った。
「ボク。そんなに握ったら、犬がかわいそうだよ」
「ボクのプラモデルをこわしたんだ」
「ほら。おじさんに渡してごらん」
「いやだ!」
「裕允! おじさんに渡して、お願い」
 優しい男の眼を見た男の子は、スーッと力が抜け、子犬を引き渡した。
「もう、放してあげてもいいかな?」
 返事がなかった。
「いいよね?」
 小さく頷いた。
「ペロのバカ!」
 男の子は子犬の頭を引っ叩いた。
 解放された子犬は条件反射で、橋のたもとから走り出した。
「すみませんでした」
 母親が深々と頭を下げた瞬間、耳を劈くブレーキの音が数メートル先で聞こえた。
 子供が振り向く。
 母親が振り向く。
 そして―。
 ぐったりとした肢体が、車の下敷きになっている。
 呆然とする母親、そして裕允―。
「かあちゃーん!」
 中南米から帰国した翌日の夕方5時。
 綾野は辛い日曜日となった。

(つづく)

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テーマ:ミステリ - ジャンル:小説・文学

  1. 2007/07/16(月) 14:44:51|
  2. 「商社マン綾野高次」

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